戸田奈津子さん講演会(2008/05/30)


霧島市文化会館


 会社の労働組合主催の文化講演会はここ鹿児島でも毎年必ず行われます。場所は霧島市民会館で約800名の聴衆が参加しました。今年の講演者は映画字幕翻訳家の戸田奈津子さんです。映画好きのまんぼーは昔からこの方の字幕にお世話になってきました。

 話のはじめはやはり映画の話、ちょうどインディアナジョーンズ4の字幕翻訳が一昨日終了したという話題から始まりました。

 戸田奈津子さん語録は次の通りです。

・ジョージルーカス監督はCG(コンピュータグラフィック)を今のハリウッドに広めたきっかけを作った人。しかし、CGはあくまで作品を作り上げるための手段であって、目的ではなかった。こうしたいと考えたアイデアを実現するために技術を作り上げたという良い例ではと思います。

・人間の素晴らしいところはプログラム以外のクリエイティブな事を思考できるところ。思考の飛躍が出来るのは人間の脳の優れたところ。

  ・ハリソンフォードはインディアナジョーンズ1作目からの知り合い。今年65歳になるが、最新作のためにかなり体を鍛えたようです。彼はとてもまじめで謙虚な人で、俳優という仕事にとてもプライドを持っている。彼は役者をする前は大工だったという話は良く聞くところであるが、なぜなのかという話はあまり聞かない。彼は実は10代の頃から俳優になりたかったが、チャンスに恵まれなかった。彼のイメージする俳優とは一流のスターであって、二流、三流の仕事をして生活するという事に抵抗を感じていた。一流以外の俳優業をするよりはいっそうのこと大工をして食いつないだ方がましだ。と考えていたそうです。

・観客が吹き替え版ではなく字幕を求める国というのは日本しかない。外国はほとんど吹き替え版で、オリジナル版というのは極わずか。俳優も日本で上映される映画はほとんど字幕であるため自分の生の声を聞いてもらえるという意味で非常に喜んでいる。

・字幕翻訳家になるには20年かかった。学校を卒業後ずっとなりたかった職業だったが、まったくチャンスに恵まれず、別の翻訳の仕事をして食いつないでいた。卒業後10年目に映画会社のパートになる事ができた。あるときに海外から映画俳優が来ることになり、当時宣伝部にいた水野晴郎氏に通訳として抜擢された。でも翻訳はしているものの会話はまったくだめ。どぎまぎしながらの通訳は悲惨なものだった。しかし、次もその仕事の依頼が来た。なぜなら、言葉はいまいちだが、映画の知識や情熱が俳優に伝わり非常に喜ばれたからであった。

・その後10年間は通訳の仕事で延べ1000人の俳優の通訳をこなした。「地獄の黙示録」作製のため通訳としてフランシス・フォード・コッポラ監督に同行。それがきっかけで字幕翻訳を担当し、その映画が大ヒットとなった。その結果実力が認められ念願の字幕翻訳家になった。

・本当に好きな事はあきらめずに情熱を持ち続ける事が大切。多くの映画俳優たちもそのような苦労をして成功した人が多い。そして、チャンスをものにした後それを持続するという努力はとても大切で、演技はもちろんだが、人間的な魅力がやはり大切です。

 映画の話を中心に、時間はかかるかもしれないが、思いは必ず実現するということを実体験や俳優さんの話を交えて語っていただきました。そして、最後にこう言っていました。「字幕は(映像に集中できないので)本来ない方がよいもの。最高の字幕とは作品を見終わった後に、字幕があったことを感じさせないものだと思います。このような字幕翻訳を目指してこれからも続けてゆきたい。」

なかなか良い話を聴くことが出来ました。また来年も楽しみにしています。

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